アーサー・ビナードさんが語る生物多様性
「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」は5月25日、詩人のアーサー・ビナードさんを迎え、「生物多様性年記念講演会」を都内で開催しました(食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク後援)。「『発見』の定義」と題したビナードさんの基調講演をご紹介します。
1741年カムチャッカ探検隊は、ベーリング海のコマンド諸島で、大きな海牛の群れを発見した。博物学者のステラーは「テラーズ海牛」と名付けて、観察記を書く。その情報をもとに毛皮商人がコマンド諸島に押し寄せ、目を疑うほどたくさんいたステラーズ海牛は1768年に最後の個体が殺され、絶滅した。発見されてわずか27年で絶滅。「発見」という言葉の意味の延長線上に絶滅がある。ステラーズ海牛は一つの例であり、同じようなことは世界のあちこちで起こっている。まさに生物の多様性が失われている。
沖縄にはこの海牛の仲間ジュゴンが棲んでいる。開発の名のもとにジュゴンのえさ場が傷めつけられ、ジュゴンの保護区を作らなくてはいけないのに米国の基地を作ろうとしている。環境運動はジュゴンを仲間入れて幅広い運動を進めていかなくてはならない。
「環境に優しい環境破壊マシーン」?
今一番おかしいと思う日本語は、「エコカー減税」。車は「環境破壊マシーン」というべき代物だ。エンジンに電池を組み込もうと、基本的には変わらない。その「車(カー)」の前に「エコ」をつけると、「環境に優しい環境破壊マシーン」になってしまう。それ以上の矛盾は、汗水たらして働いて生活費を稼いでいる人たちが収めた税金を使って、環境破棄を進めてしまうことだ。
楽しく前向きに「マイボイコット」を!
それでは私たちに何ができるか。お勧めは個人でできる「マイボイコット」。ボイコットの日本語訳である「不買運動」には、受け身で消極的なイメージがあるが、マイボイコットは前向きに楽しく行う運動だ。たとえば、消費電力が大きい自動販売機を使わないなど、自分にとって付き合わないものを見つけて、スパッと関係を断ち切ること。これがマイボイコットだ。
大量生産、大量消費、大量ごみ出しの今の暮らしを続けているかぎり、地球は救えない。積極的で前向きで楽しい「マイボイコット」を!